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ねこじゃらし #1
 ねこじゃらしを目の前に持っていくと、君は面白いように踊った。何故、これほどまでに君が猫じゃらしに興味を示すのか定かではない。しかし、そのときの君にとってはそれがすべてであり、他の事柄はどうでも良いらしかった。上に掲げればジャンプをして掴もうとし、右に移動させれば右にといったようにその行方を飽きることなく追っていた。
その姿は、周りから見れば奇妙な光景であったかもしれないが、僕には微笑ましい光景だった。ここまで警戒心を解いて僕に関わる人物など他にはいなかったし、その行動の一つ一つが奇妙でありながらも生き生きとしていて、とても魅力的なのだ。近くで見てみないとわからないこの魅力。そもそも、常人にはこの魅力はわからないのかもしれない。どうして、気がつかないのだろうかと不思議に思うくらいだ。それは、僕にはない特別な才能というか、それに似たものを君は僕や周囲の人々に対して放っているのだというのに。

 君と初めて出会ったのは、夏の雨が降る静かな駅のホームだった。その駅は、無人駅に近い駅で上り列車と下り列車が止まるホームが一つしかない小さな駅だった。田舎にあるのどかな駅を創造してみてくれ、そっくりそのまんまの風景がその駅のホームになる。もちろん人気が少なくて、いつ来ても殺伐とした雰囲気がそこにはある。僕が君を始めて見た日は、それに拍車をかけたように人っ子一人いなかった。天候のせいもあるだろうけど、いつも以上にホームは寂しげに見えた。
 誰もいないホームで電車を待つ。傘に当たる雨音が僕の耳元で小さな音楽祭を開催していた。観客は僕一人。静かに聴き入るその姿は、オーケストラにとっては絶好の観客だろう。指揮者、雲の上の雷様。演奏者、雨粒フィルハーモニー・オーケストラ。指揮者の熱狂的な姿勢とは裏腹に、雨粒の演奏者はしっとりとした曲を奏でている。僕はしばしその曲に聴き入っていた。
 そんな時、君は現れた。雨の音しかしない静かなホームに、鮮やかな赤色の傘をさした君はいた。僕が自分自身の世界に入り込んでいるうちにやってきたらしい。うんざりするような天気だった為か、その燃えるような色の傘は僕の目に焼きつくかの如く映って見えた。その時点では、性別の判断はできなかった。傘に隠れて顔が見えなかったし、何しろ雨で視界が悪かった(しかも、その傘は普通の傘よりサイズが大きいものだった) 雰囲気としては女性に見えるが、傘から見え隠れする服装はダボダボのGパンだった。体系は細すぎず太すぎずと言ったところ。少し僕の位置から距離があったが、全身像を見ると身長はそんなに大きいほうじゃないように見える。僕の気持ちをまるで知っているかのように絶妙に君の素顔を隠す赤い傘に僕は少しイライラしていた。
なぜこんな感情が起こるのだろうか。見ず知らずの他人がホームに立っているだけなのに、その存在が気になってしょうがない。しぐさの一つ一つに目を配り、隠された素顔を見る機会をうかがう。近づいていきたい衝動に駆られるものの、なんと表現したらいいかわからない理性のような感情が足を踏みとどまらせる。゛この場から動いてはいけない、ただじっくりと観察をするんだ″とどこからか僕に語りかける。
来るはずの電車がなかなか来ない。僕がホームに着いた頃には10分程で次の列車が来るはずだったというのに、一向に来る気配がない。10分がこれほど長い時間に感じたのは、中学の頃生徒会決算報告の発表をステージの上で行った時以来じゃないだろうか。


永瀬の創作 | 02:19 | comments(1) | trackbacks(0)
秋色の丘
丘の上で 空を眺める君は
青い空に 吸い込まれた

慌てて僕は 駆け寄るけれど
君はもう 其処にはいない

君の温もりが残る 丘の上
君を求めて 僕は立ち尽くす

行ってしまった 君は遠くへ
誰も知らない 君だけの国へ



秋が香る丘の上に 僕は立つ
僕の街の見える この場所に

君を見ていた 街の景色
今も変わらず 動き続ける

君はまだ 此処にいるんじゃないか
そんな気持ちを 捨てられないでいる

行ってしまった 君は何処へ
誰も知らない 君だけの国へ



丘の上で 落ち葉の行く末を見る
風にのって 遥か彼方へ

君は言った また帰ってくると
今も変わらず 信じている

君はまた 此処に来るんじゃないか
そんな気持ちを まだ忘れずにいる

行ってしまった 君は其処に
誰も知らない 君だけの国へ


永瀬の創作 | 01:48 | comments(0) | trackbacks(0)
何が起こるかわからない明日には昨日がある
終わりはいつやってくるのだろうか。

半袖じゃ少し寒いくらいになった部屋の中で布団に包まりながらタバコで黄ばんだ天井を見上げる。薄汚いのだけれど、それが毎日のように続くのだから自然と愛着が湧くようになっている。そんなのどうでもいいことなのだけど。

見えない終わりが、近づいてくるのを感じる。曖昧なそれは、今までどれだけの人を不安にさせてきたのだろうか。今、こうしていること。それが突然スイッチを切ったように暗転する。ありえないことではないそんな見えない何かを想像する。それはどんな形をしているのだろうか。形などないのだろうけど、想像する上で実体化させることで、わからない何かを感覚として捕らえるのが容易になる。無意識のうちに人は沸き起こる感情を具現化しようとする。そうすることが自分にとって必要なことであるとあらかじめインプットされているかのように。

それは、捕らえることのできないものだった。いくら具現化しようと頭の中でイメージを思い浮かべてみるものの、それは空気中を浮かぶ煙のように姿を透明の中に隠してしまう。求めるものは、そうやって失われていくのだ。いつだってそうだ。

外は雨。台風が近づいている影響で、窓を締め切った部屋の中でも雨音は聞こえてくる。荒れ狂う感情の波のようにその音は上下する。耳が痛くなるくらいの轟音を響かせたかと思えば、頬を伝い落ちる涙のように静かなものになったりする。

完全なものなんてないのだ。自分が憧れる人だったり、毎日のように聞く音楽の中にだって。すべては何か色を持った生命体で、何か一つのことを伝えようとその命を燃やす。伝えることはその時々によって違い、色もまた鮮やかな変化をもたらす。白だったものが、今日は黒で、明日は赤かもしれない。ひとつの色に留まっていることは実に困難で、その時に光るそれは絶えず変化してしまう。今、天井を見つめるこの時にだって、視点の先は変化し続け、掌に刻まれた模様を網膜に映し出している。絶えず変化することで、僕らは平静を保っているんだ。

何にだって変化できる。色も変えることができる。また、変わらないでいることも不可能ではない。海であり続けることができる。大きな変化はないが、海岸に打ち寄せてまた引き返す。それが海であり続けることであるなら、僕は空だって飛べる。羽なんかいらない。飛ぼうと思えばその瞬間に僕は空を飛ぶ。肩にジェット燃料を積むことなく飛ぶことができる。そういうものだろう?

扉を開いて外に出る。雨の音は耳を通して大きくなる。体で雨粒を受け止める。急激に体が温度を失う。いとも簡単に失われていく体の感覚をどうすることもできず受け入れる。雨は資格と共に大切な何かを体から押し流す。残ったのは無だった。無の中に何があるのか。何もないし、想像することのできない多くのものが存在する。観念という縛りを失った得体の知れない何か。それは人を動かす。言葉を使う人間という種族の伝達方法。男と女という性別の違い。人であるということ。地球という惑星。見えない明日。

何もなくなった世界に何を求めるか。求めるものは何もない。求めることすらおろかな行為だろう。自分の意志とは関係なくことが進む。一方的に見せられる映画のような映像や、色というものすべてを無視したこと。無音、無臭、無欲、無我、無、無、無。













感覚が戻る。そこは何も変わらない昨日だった。乱雑に置かれた物が散乱する部屋。カーテンの隙間から差し込める光。ラジオの音。すっぱい口の中。冷たくなった手足。朝食のにおい。濡れたはずの体は乾ききっていて、駅へと向かう道には水溜りもない。相変わらず寒くなってきたことを感じさせる日常がそこにはあった。疲れた顔で満員電車のつり革を掴むサラリーマン。ありえないといいながら笑う女子高生。カバーの文庫本を開く青年。薄汚い服を着こなす老人。始業のチャイムの音。

明日は今日だった。少しだけの変化を感じさせるだけのありふれたもの。先の見えない真っ暗な道。眩しすぎて目を閉じることしかできない太陽。そういったものが、明日には待っていて続いている。ほんの一秒の先も、今この時も。何か終わり、何かが始まる。それは目にする情景とは裏腹に耐えることなく続く。


永瀬の創作 | 05:21 | comments(0) | trackbacks(0)
涙すると 違う景色が見えた
今 そこにあったものが違く見える
ほんの少し 綺麗に見える

涙流すこと 意味のあること
リセットする為のスイッチ
新しいことの為 これ必要

涙流れ 想い溢れ
押さえ切れない気持ち
支えきれず こぼれた

涙すること 美しいこと
生きてるって証拠
明日への糧となる

空見上げれば 青
白い雲と混ざって
みずいろに見えるよ

涙無しでは わからない
新たな出逢い
この先に待つ 希望の色




永瀬の創作 | 07:15 | comments(0) | trackbacks(0)
ループ
少しずつ明るくなっていく空を見て
僕はいつまでもこうしていてはいけないのかなと思った。
何故、突然そんな事を思ったのかはわからないのだけど、そう思ったんだ。



風景はガラリと変わる。一面の暗闇。その中に何かの気配がする。
視線…のような気がする。鋭くなく、かといって優しくもなく。
誰かが僕を見つめている。何をするでもなく、ただ其処で、僕を見る。
僕の全てはその視線の持ち主ではないか、と思う。
いや、感じるとでも言うのだろうか。

目を閉じると、そこにイメージが浮かび上がる。
檻の中で震える大きな生き物。
その生き物は、さほど大きくない檻の中で丸まっている。
その姿は『百獣の王』と呼ばれるにはか弱すぎた。
真っ暗闇の中央にある檻。彼はそこで何を見たのだろうか。
何に脅え、何を思うのか。



アングルが変わる。檻の中からの映像。
そこから見る景色は殺風景な物だった。
勇ましく駆け回ったサバンナは其処には無い。
あるのは何処までも続くかわからない闇と無機質な鉄の檻。
脱出を試みようとは思わなかった。しようと思えば簡単にできるだろうに。

彼は脅えていた。
『百獣の王』の生活に。彼を狙う仲間に。逃げる草食動物に。
当たり前のような生活、そのすべてが彼にとっての恐怖だった。
自分の威厳を保つために、日々鍛錬を怠らぬこと。
激闘の末に傷付いた彼の仲間。
必死に逃げる装飾動物を必死に追いかけ、首元に噛み付く。
しばらく痙攣した後に動かなくなるしなやかな肢体。
彼はその日威厳を保ち続けたこと、王座を死守したこと、殺すこと
その一つ一つを達成することに自分の生を感じた。
そうする事で自分を確かめていたのだ。

終わりは突然訪れた。
打ち込まれる銃弾、遠のく意識。
気が付くと彼は檻の中にいた。
彼は捕まってしまったのだった。
彼のいたサバンナは、彼を狙う仲間は、彼が追った草食動物は…
彼はすべてを失った。ある日突然に。

それから彼はすべてに恐怖を感じるようになった。
自分のしてきた行為のすべては恐怖だったのではないかと。
彼の体は震えた。大きかったその身体をちいさく丸めて。

闇の中では彼の行為がイメージとして映し出される。
大きな爪で仲間を引き裂き、なぎ倒す姿が。
駆け回る動物の目が少しずつ濁っていく姿が。
返り血を浴びた彼自身の姿が。

彼はそれをじっと見る。
その目は、獲物を狙う鋭い目ではなく、けれど漠然と。
その目の先には檻の中ので震える何かが見える。
その何かは突然震える動作を止め、こちらにゆっくりと振り向く。

ソコニイルノハダレ?
ドウシテボクヲミテイルノ?
キミハイッタイナニヲミテイルンダイ?



アングルが変わる。何処までも続くサバンナの風景。
草原に横たわる百獣の王。
傷ついた身体、変色したどす黒い血。
それを取り囲むハイエナの群れ。
立派な鬣は泥に汚れ、無様に舌が垂れている。
鼻の上に止まる蝿。貪られていく身体。
残されたのは干乾びた骨と
体を構成していたであろう皮のようなモノ。
血は固まり、大地に染み込む。



早送りで変わっていく風景。
百獣の王がいた場所からは小さな芽が出て
それが成長していく様が映し出される。
そこに草食動物がやってきてそれを食べる。
何かに気づいた草食動物は後ろを振り返る。
その瞬間に首元を噛み付かれ、息絶える。
草食動物を食す虎は銃弾を腹に打ち込まれる。





空は少しずつ青みを帯び始めていた…


永瀬の創作 | 06:28 | comments(0) | trackbacks(0)
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